2017年4月から、2017年9月にかけて放送されたTVアニメ、
「Re:CREATORS」のレビューです。

【あらすじ】
人は、その手で多くの物語を創造してきた。
喜び、悲しみ、怒り、感動。
物語は人々の感情を揺れ動かし、魅了する。
しかし、それは傍観者としての感想にすぎない。
もしも、物語の登場人物たちに”意思”があるとしたら、彼らにとって、物語を産みだした我々は神の存在なのだろうか?
―我らの世界に変革を。
―神々の地に制裁を。
「Re:CREATORS」
誰もが皆、《創造主》になる。
(公式サイトより)

評価 60点
【良い点】
独特な設定
様々な媒体の登場人物(以下被造物)たちが現実世界に現れ、
作品の枠組みを超えて邂逅するというのは決して珍しくはなく、
ゲームなどでは良くあります。
ただ被造物の原作が、作中に存在する架空の作品という、
セルフクロスオーバー設定なのは、中々独特な世界観だと感じました。

また、被造物と自分達を作った作者(以下創造主)が出会うというのも、
あまり見ない興味深い展開だったと思います。
バランスのとれた結末

若干気になる点もありますが、クライマックスは中々感動的だったと思います。
演出も良かったと思いますし、 結末としても、バランスのとれた良い落としどころだったと感じました。
また、最終回もエピローグとして悪くなかったと思います。
作画のクオリティが高い
TVアニメとして最高レベルってほどではないですが、
普通に高クオリティです。
作画に関しては、不満はありません。
【悪い点】
掘り下げ不足の被造物達
通常のクロスオーバーの場合、各参戦作品に元となる作品があるわけです。
そのため、基本的にクロスオーバーを楽しむためには、
作品を楽しむ側が、各作品やキャラに対して最初から愛着を持っている状態であることが前提となっています。
しかしこの作品は、参戦作品の全てがオリジナル。
アニメ内に登場する架空の作品のことなんて、当然視聴者は知らないわけです。

そうなると、各々の背景を作中でしっかりと描写しないと不味いわけですが、そういった掘り下げが全然出来ていません。
一応、背景について説明はしています。
ただ、台詞で説明されたり、前後の脈略の分からない断片的なそれっぽいシーンを見せられて、「こういうことなんです。」とされても、それで感情移入するのは難しいです。

視聴者を置いてけぼりにしている印象が強く、
話が盛り上がりに欠ける、大きな要因になっていたように思います。
キャラにしても、それっぽいキャラデザに、それっぽいキャラ付けをされた記号的なキャラでしかなく、 薄っぺらさは否めませんでした。

まだ創造主の面々の方が、魅力はあったような気がします。
キャラの扱いに疑問を感じる
まず煌樹まみかですが、 唯一の子供向けアニメからの参戦という立ち位置を、ほとんど活かせていません。

彼女に与えられた役割は、某魔法少女アニメ以降テンプレなりつつある、魔法少女×悲劇を演出するための舞台装置にすぎなかったように感じました。
考え方が異なる彼女を上手く活用すれば、ストーリーにもっと深みを出すことができたと思います。
彼女にああいった役割を割り当てたということ自体が、
それっぽいことをやっているだけという本作の底の浅さを表しているようで、残念に思います。

次に築城院真鍳ですが、 明らかな危険人物である彼女に対して、主人公サイドの方々が何もしないというのは、いかがなものかと。
最終的に放置している状態ですし、それでいいのかと疑問に感じます。
それと、基本的に被造物の方々は、皆アルタイルに対して何もできずに終わっており、 これといった見せ場がなかった、という印象が強いです。
ではアルタイルが魅力的なキャラだったかというと、それも全然ですし。

特にセレジアの最期は、非常にガッカリです。
別に好きなキャラではなかったですが、一応メインキャラなわけなので、
もっと適したやり方があったように思います。
設定に納得できない
この作品における事件の発端は、アルタイルが現実世界に出現したことなわけですが、なぜアルタイルが現実世界に出現することができたのかという点について、全くといっていいほど説明されてなかったように思います。

ストーリーを楽しむうえでは重要なことでもないので、視聴時はさほど気にならなかったですが、改めて考えてみると大きな問題点です。
世界観の根本なので、許容できない人もいるでしょう。
【総評】

映像のクオリティと設定、そしてスタッフの実績等、
様々な点で期待していた作品でしたが、結果としては期待外れでした。
なんといっても、被造物達のバックボーンの掘り下げ不足が致命的だったと思います。
キャラとしても薄っぺらいですし、 各々の背景も、断片的なそれっぽいものを見せられているだけなので、彼ら、彼女らの想いや行動に対して、感情移入することも難しいです。
全体的に視聴者を置いてけぼりにしている感があり、盛り上がりに欠けました。
設定で説明するのではなく、描写で伝えることをもっと重要視すべきだったと思います。
こんな感じになるのなら、普通に既存作品のクロスオーバーをやった方が面白いでしょう。
まあそれは権利の関係で難しいでしょうが、
例えば、被造物がほぼパクリのオマージュキャラであったなら、
「ああ、あれのことか(笑)」と、ネタ的な面白さは感じられたと思うんですよね。
オリジナリティはありますし、アニメーションとしてのクオリティも高いだけに、 惜しいという気持ちが強い一作です。
内容だけで評価するなら、粗も多いですし凡作といった感じですが、
作画と設定の独自性を考慮し、ギリギリ佳作評価としておきます。
Re:CREATORS(レクリエイターズ)
https://recreators.tv/