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レビュー:四月は君の嘘【感想・評価】


2014年10月から、2015年3月にかけて放送されたTVアニメ、
「四月は君の嘘」のレビューです。


【あらすじ】

「14歳の春―僕は、君と走りはじめる」

からっぽになった少年が一人の少女と出逢う。
少女の自由で情熱的な音楽の調べが、少年の止まっていた時間を突き動かす。

11歳の冬―早熟の天才ピアニスト・有馬公生は母親を失ったショックから
演奏をするとピアノの音が聴こえなくなるというトラウマを背負ってしまう。
以来、少年は次第にピアノから遠ざかっていく。

ピアノと母親を失った彼の日常はモノトーンのように色をなくしてしまっていた。

そんなある日、公生を子供の頃から見てきた幼なじみ澤部椿は、あるクラスメイトを紹介する。

クラスメイトの名前は宮園かをり。

彼女はコンクールに出場するヴァイオリニストだった。
楽譜を超え、自分なりのスタイルで課題曲を演奏するかをり。
その奔放な演奏を見て、モノトーンだった公生の世界がカラフルに色づきはじめる。

「暴力上等、性格最低、印象最悪……でも、彼女は………美しい」。

音楽が導くボーイ・ミーツ・ガール。情熱的なヴァイオリンの響きが、
凍りついたピアノを融かしたとき、2人は豊かなハーモニーを奏でるのだ。

公式サイトより)



評価 89

【良い点】

美しく奏でられるストーリー。

この作品が優れている点のひとつは、
基本的には悲劇でありながら、青春ものとしての心温まる要素を内包しているところだと思います。

辛いシーンや悲しいシーンは確かにあり、それはそれで見どころではあるんですが、
本作はその後のフォローがしっかりあるため、優しく希望に溢れた物語に仕上げています。

完全に陰鬱な雰囲気にはせず、あくまで青春ストーリーであることを貫いた点は賞賛に値しますね。

最たる例は最終回。

最終的な結末は悲哀に満ちたものですけど、
かをりの嘘によって救いを、椿に行動によって希望と華やかさを与えていて、
ただ辛くて悲しいというだけではなく、爽やかな終わり方でもあったと感じます。

哀愁を感じる物語であるというのは間違いないですが、
決してそれだけではない、素敵なストーリーでした。

全体的なストーリーラインは特別斬新というわけではなく、結末も予想通りのものでしたが、一つ一つのシーンにおける台詞や演出が素晴らしく
心に沁みる、とても綺麗な物語に仕上がっていたと思います。

同じ楽譜であっても、それを奏でる人によって全く異なるものになる。
それは作中でかをりが見せてくれましたが、「四月は君の嘘」というアニメも同様です。

ありがちなストーリーを、とても美しく奏でた作品でした。

切ない嘘


タイトルにも使われてる嘘ですが、
嘘の内容自体は割と予想がつくものだったと思います。
ただ本作のお話自体が、その嘘によってもたらされたものだったというのがなんとも切ないです。

この嘘のとばっちりを受けたキャラもいますが、
姑息と理解しつつもそうせざるを得なかったというのは理解できますし、
しっかりと感情移入することができたので良かったです。

そして、その嘘と、その嘘をつくにいたった心情が明らかになることによって、
これまでの物語が異なる色彩を帯び、一つ一つの台詞やシーンが深みを増します。
このギミックは本当に素晴らしい。

作中でたびたび出てきた“カラフルに色づく”という台詞。
最終話を見ることで、その台詞がより強く響いてくるというのも感動的でした。

“泣ける”だけじゃない

「四月は君の嘘」という作品は、泣けるアニメ、感動するアニメとして認知されていると思います。

その認識自体は間違っていませんが、
この作品は決してただのお涙頂戴ものではありません。

中盤までは主人公である公正がトラウマを乗り越える成長物語でしたし、
第13話「愛の悲しみ」では、青春ものらしい非常に熱い展開を見せてくれます。

またキャラクターの心理描写がとても巧みで、青春ドラマとしても優秀。
公正の幼なじみである椿の想いには、度々心を打たれました。

キャラクターの心情描写が上手い。

本作は声優の演技力や、間の取り方などの演出が素晴らしく、
キャラクター達の感情で心が揺さぶられます。

そういった部分の演出力に関しては、間違いなく最高クラスでした。

そのため起こった事象によって感動するのではなく、
各々の想いに感動してしまう作品であるというのも評価ポイント。

本作の結末にしてもその結末自体に涙するというよりも、
その結末に至るまでの、そして至った後のそれぞれの想いに涙が込みあがります。

結末が予想できたとしても、
過程の描き方次第で印象は全く異なります。

この作品はその部分が非常に丁寧で、各々の想いが胸に響きました。

キャラクターの配置が上手い。

本作に登場するキャラクターには、
どのキャラにもしっかり物語上での役割があり不要なキャラがいません。
それぞれの配置も絶妙なバランスです。

まさに、ストーリーの為にキャラが存在するという感じでした。

ストーリーに重きを置くとキャラが弱くなりがちですが、
本作に関しては、それぞれしっかり掘り下げられていて活き活きとしています。

特にヒロインである宮園かをりは、
最後まで見ることで印象が変化する、中々に魅力的なキャラだったように思いました。

演奏シーンは迫力がある


作画のレベルは高く終始安定していましたが、
中でも演奏シーンは本当に良かったと思います。

静止画で済ます作品もある中で、
しっかりと動く本作は、迫力があり見応え抜群です。

音楽は総じてレベルが高い

主題歌は「光るなら」を初め、どれも良かったです。
後半OPの「七色シンフォニー」に関しては、最初はあまり好印象を持てなかったですけど、作品に合っていましたし、なんだかんだ良い曲だったと思います。

作中のBGMに関しても、音楽を題材にしているだけあってレベルが高いです。
場面場面にあった曲が使われ、ストーリーを盛り上げてくれた
と思います。

また彼らが演奏する曲に関しては、
そこまでのシナリオという+αが加わることもあり、どれも味わい深いものでした。
クラシックのコンサートに行ってみたいと思わされます。



【気になった点】

前半の冗長さ

前半部分の主軸だった公正トラウマ描写は、ちょっとしつこかったと思います。
アニメのテンポに関してはあまり気になることは無いんですけど、
本作前半は、ちょっとテンポの悪さが気になってしまいました。

とはいえ、そこがくどかったからこそ、
公正の成長が際立ったという側面もあるため、一概に悪かったとも言えませんが。

過剰な演出

この作品の演出は間違いなく高水準なんですけど、
時々過剰演出に感じてしまう部分もありました。

特に最終回に関しては、演奏の終わり方やBGMの選曲など気になってしまう部分が多かったです。

好みが分かれそうな表現方法

雰囲気としては一般向けと言える作風ですが、
ポエムと揶揄されそうな詩的な感情表現や、お約束的な演出など、
人を選びそうな要素も多いです。

またストーリーに関しても、
大まかなあらすじに関してはありがちなもので、目新しさはないです。

そこをキャラの心情描写の上手さでカバーしているわけですが、
逆に言えば、キャラクターに感情移入できるかどうかが非常に重要だと思います。
できなければおそらく楽しめないでしょう。

「いちご同盟」のオマージュ。

作中での「心中しない」って台詞は、「いちご同盟」から取られています。

それ自体は何の問題もないと思うんですが、
それに対する公正の返答は、「いちご同盟」を知らないと何だか分からないものだったと思います。
いきなりラヴェルがどうとか言われてもね。

まあ、ニュアンスは伝わるとは思いますが。



【総評】


前半はしつこいトラウマ描写によって冗長さを感じ、いまひとつな印象でしたが、
最後まで見てみると、それを踏まえても十分素晴らしいと言える作品だったと思います。
個人的には2010年代アニメの最高傑作。

最初は「のだめカンタービレ」みたいな感じかと思ってましたが、
終わってみれば、作中にも登場した小説「いちご同盟」のオマージュっぽい作品でしたね。

ただ、公正とかをりの関係性や、彼らを取り巻く人間模様などは全く異なり、
あくまで部分的な展開が似ているだけの別物です。
そのため「いちご同盟」のファンが本作を見て面白いと感じるかは分かりませんし、逆も然りだと思います。

泣けるアニメとして語られがちな本作ですけど、
中盤までは主人公がトラウマを克服し成長する部分が話の主軸となっていて、13話ではかなり熱い展開を見せてくれます。

そういった部分との対比が、後半の展開を引き立てている側面もあり、
単純に泣けるというだけではない、味わい深い作品だったと感じました。

また、「公正と出会えてかをりは幸せだった」というのも重要で、
上げて落とす展開で悲劇を演出しつつも、救いがちゃんとあるためバランスが取れています。
この点は話の作りとして非常に上手いと感じました。

そして、椿の存在もとても大きい。
公正の側に彼女がいるからこそ、今後の公正の人生が決して悲しいものでは無いという希望を抱くことができますから。
彼女の最後の行動には、救われます。

個人的に報われないただのバッドエンドは嫌いですけど、
本作のように悲しい結末でありながら、登場人物に対する救いがしっかりあるビターエンドは、心に刺さるものがありながらも清涼感を感じられるので好みです。

万人向けっぽい雰囲気でありながら結構人を選ぶ作品だと思いますが、
私にとっては本当に素晴らしいと思える、心に残るアニメになりました。
一生忘れないであろう作品の一つです。

TVアニメ「四月は君の嘘」オフィシャルサイト
https://www.kimiuso.jp/