2009年1月10日から、2009年12月26日にかけて放送されたTVアニメ、
「獣の奏者 エリン」のレビューです。

【あらすじ】
「この世に生きるものが、なぜ、このように在るのかを、知りたいのです。」
決して人と心が通じないと思われていた崇高な獣『王獣』を操ることができる類まれな才能を持ち合わせた少女・エリン。
彼女は、その才能を持つ故に、
王国の勢力争いに巻き込まれ、波瀾万丈の人生を送ることになる…。
日本を代表するファンタジー作家・上橋菜穂子の『獣の奏者(そうじゃ)』のアニメ化。
(公式サイトより)

評価 67点
【良い点】
ストーリーの完成度は高い
最後まで見て全体を振り返ると、ストーリーとしての完成度はとても高かったですし、面白かったと思います。
世界観の構築が上手いので展開に説得力がありますし、終盤も盛り上がりました。
主人公エリンの成長という点でも、丁寧にわかりやすく描けています。
子供向けながらテーマ性もしっかりとあり、考えさせられる作品でした。
オープニング
オープニングは良い曲でした。
スキマスイッチの原曲も、元ちとせ版のどちらも良かったと思います。
【気になった点】
映像全般
キャラデザは典型的な子供向けデザインであるにもかかわらず、内容は結構シリアス度が高めなため、絵が長所を消してしまっているように感じました。
シリアス展開を盛り上げる上で明らかに足を引っ張っていましたし、緊張感にも欠けたように思います。
絵面が悪かったですね。
また、絵の動きが少ないというのも気になるポイントでした。
日常系アニメなどであれば動かなくても大して問題はありませんが、この作品はそうではありません。
闘蛇の大軍、王獣の飛翔、セザンの戦いなど、作画次第で見応えのあるシーンになったはずの箇所が多々あります。
しかし実際は、あまり動かないのでどれも迫力に欠けるという残念な結果に。
王獣が闘蛇を襲う際の演出なんかは良い感じだったと思いますが、逆に見せ方として好印象を抱いたのはそこくらいでしたね。
子供向けアニメとしての弊害
上述のキャラデザもそうですが、子供向けアニメとして作ったことによって様々な弊害が発生していたように思います。
ひとつはBGMです。
本作はシリアスな展開であっても、それを盛り上げるような音楽があまり使われていなかったように思います。
アイキャッチで流れる音楽も最初から最後まで変わらず、終盤の内容を考えるとさすがにのどかすぎるような印象を受けました。
またキャラクター面でも、子ども受けを狙ったアニオリキャラの二人がシリアス描写の足を引っ張っていたように思います。
良く言えば重苦しい内容を明るくしていたと言えますが、悪く言えば締まらないという印象を与えるキャラでしたね。
演出面でも分かりやすさを重要視するようなものが多く、それがくどさや安っぽさに繋がっている部分もあったように感じました。
冗長さがある
全50話4クールと長い分、展開が遅かったり中だるみという部分が気になりました。
全体的に冗長感はあります。
特に話が動き出すのが7話からというのは割と致命的。
序盤の掴みはかなり悪かったと思います。
ちなみに序盤部分はほとんどアニオリなので、子供向けとはいえもう少し何とかして欲しかったところ。
また序盤を乗り越えても、基本的にはエリンが成長していく過程が淡々と続いていくだけなので派手さはありません。
丁寧な描写は本作の美点だと思いますけど、退屈感もありました。
エリンの声
子供の頃の演技は問題ありませんでしたが、成長してからの演技はちょっと気になってしまいました。
【総評】

上橋菜穂子さんの小説「獣の奏者」を原作としたアニメ。
まさにNHKアニメといった感じの良アニメだと思いますが、
手放しには褒められない出来栄えです。
この作品の欠点は、一言で言えば「インパクト不足」。
シナリオの完成度は高いですけど、話が動き出すのが7話からというのはちょっと遅い。
また絵の動きが少なく、衝撃的な展開なども殆ど無いため、見ていて退屈さを感じることも多かったです。
シリアスな展開を盛り上げられないのは、典型的な子供向けアニメとして制作したことによる弊害だったと思います。
やりすぎると苦情が来そうですから。
全体を通して考えれば面白かったのは間違いありませんが、
視聴中に「早く続きが見たい」という感覚がほとんど無かったです。
引きこまれる要素があまりありませんでした。
以上から、原作者が同じであっても「精霊の守り人」の方がずっと優れたアニメだったと思います(大人が見るのであれば)。
あちらはアニメとしての魅力がありましたけど、本作の魅力のほとんどはストーリーの世界観の良さでしたから。
そのため、アニメを見るなら原作を読んだほうが良いです。
話としては非常に秀逸なので、大人向けのアニメ化であったなら凄い作品になっていたと思うだけに、残念な気持ちが強いです。
ただ活字が苦手という人もいるでしょうから、そういう人であれば見る価値はあると思います。
アニメはアニメで、単体としてみれば十分良質であるのは間違いありませんので。
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その他のアニメレビューはこちらから。
獣の奏者エリン|NHKアニメワールド
https://www6.nhk.or.jp/anime/program/detail.html?i=erin